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え、自分のこれまでの経験がカウンセラーとして活かせるわけじゃないんだ?




キャリアコンサルタントの鈴木さくらです。


昨夜は昨年キャリアコンサルタント養成講座を修了された、さくら組の元受講生さんたちが「さくら先生!1級技能士の合格祝いをしましょう!」とお祝い会を開いてくれ、久しぶりに集まってワイワイとした時間を過ごしました。講師として感無量です。本当にうれしかったなあ。


これまでたくさんの受講生さんと出会うなかで養成講座への受講動機を聞いてみると、「これまでの自分の経験が活かせそうだと思ったから」という声を聞くときがあります。年齢としては、40代以降に多いかな。


そのような方々はこれまでのキャリアにおいて順風満帆というよりも、うまくいかなかったり、自分の意志とは反して物事が進まなかったり、キャリアで悩まれたというご経験が多いかもしれません。


キャリアでたくさん悩んだ分、キャリアで悩まれているクライエントがいらしたときに気持ちがよく理解できる・・・ということが想像できますね。


でも、キャリアコンサルタントとして、プロとしてご支援するのであれば、自らの経験というフィルターを通してクライエントを直接的に理解することはしないのです。それではクライエントに対して共感的理解ができないからです。


キャリアコンサルタント養成講座では、初期の段階でロジャーズのカウンセラーとしての中核三条件《無条件の肯定的関心(受容)・共感的理解(共感)・カウンセラーの自己一致(純粋性・誠実さ)》を教わり、叩き込まれます。


そのうちのひとつ、共感的理解とは「クライエントが感じているように感じ、あたかもクライエントが感じているように理解し、伝えること」をいいます。


共感的理解に関わる大事な要素として「内的準拠枠(内的照合枠)」があります。内的準拠枠とは、個人がなぜその思考・判断・感情等を持つのか、その基準となる心の枠組みのこと。さまざまな事象についてのその人の思考・判断・感情等の基準となるものです。簡単に言うと、その人の「ものの見方・捉え方」、あるいはその原点となる「視点」と思ってもらえるとよいでしょう。


内的準拠枠は一人ひとりみんな違います。誰一人として同じ内的準拠枠を持っている人はいません。したがって、クライエントとカウンセラーももちろん異なる内的準拠枠を持っています。それを前提として、カウンセラーはクライエントがどんな内的準拠枠を持っているのか理解しようと努め、その固有の内的準拠枠を通してどんな世界をクライエントが見ているのかを共感的に理解しようとします。クライエントを理解する際に基準となるのは、あくまでクライエントの持つ内的準拠枠です。


と、ここまで伝えたところで、「え、自分のこれまでの経験がカウンセラーとして活かせるわけじゃないんだ・・・」「自分の経験はカウンセラーとして役に立たないんだ・・・」と大いなる早合点にがっかりしてしまう受講生さんもいらっしゃいます。


でも、安心してください。そんなことないんです。


クライエントの内的準拠枠を理解しようと努めるカウンセラーにも同じく内的準拠枠があるということは、カウンセラー自らの内的準拠枠をまったく無視してクライエントのそれを理解することはできないものです。クライエントの心の枠組みを正確に知覚するためには傾聴が不可欠ですが、傾聴だけでは足りません。クライエントの主観的な世界をあたかも自分自身のものであるかのように感じ取ることのできる共感的理解には、カウンセラーの持つ内的準拠枠の「幅と深さ」が不可欠です。


その幅を広げ、深めていくのに、カウンセラー自身のさまざまな経験が役立ちます。ここで冒頭の話にやっと戻ります。カウンセラーのさまざまな人生経験は、それを直接そのまま役立てることは基本的にはしません。ですが、たくさんの人生経験はカウンセラーの内的準拠枠の幅を広げ深めることにつながり、結果、クライエントの内的準拠枠を理解することに役立てることができるのです。


クライエントの持つ唯一無二の内的準拠枠をとおして共感的に理解することは決して簡単なことではありませんが(いや、ほんとに)、何一つ無駄な経験はないんだなと理解できると、改めてこの仕事の滋味深さを感じますね。様々な経験は人としての成長を促してくれます。人としての成長がカウンセラーには不可欠であることを実感しているところです。


(おしまい)





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