スピリチュアリティと科学の交差点~時代を超えて紡がれる「超越」とは~
- sakuravivalavida
- 5月29日
- 読了時間: 5分

わたしは現在、上智大学グリーフケア研究所で学生をしています。
グリーフというのは大切な存在をなくしたときに嘆き悲しむ、悲嘆のこと。愛する人だったり、ペット、大切な仕事、身体の一部などなど人生の中でグリーフを経験しない人はいないですね。主にグリーフケアやスピリチュアルケアについて学んでいて、私がここの学生になってよかったなあと思うことは挙げればきりがないのですが、そのひとつに、「魂」とか「神」「スピリチュアル」「スピリチュアリティ」っていう言葉が現役医師や教授陣、学生同士のあいだでなんのためらいもなく、それこそ「お茶しようよ」ぐらいにふつうに話されているということです。
上智大学はカトリックですから神父様やシスターがそういった言葉を使うのはわかるのですが、科学技術の最先端を担うお医者さんや東大・京大出身の教授陣がそういう言葉を日常的に、かつ学問において出していて、なんだかそれが、わたしにはとてもうれしかった。なぜなら、いわゆる世間一般でいわれている「スピリチュアル」はどうしてもどこかオカルト的な含みがまだありますからね。
わたしの職業であるキャリアの分野においても、ベースは心理学やキャリア理論で、つまりは人文科学ですから、そもそも「魂」とかワードとして出てこない。とはいえ、たとえば晩年のマズローやロジャーズは明らかにスピリチュアリティへの理解を深めています。でもそのあたりは正直、心理学という科学においてはすっ飛ばされているなあという印象です。
多くの人が知っているマズローの欲求5段階説は、実際にはマズローは「欲求五段階説」とは言っておらず、「欲求の階層」(欲求階層説)と言っています。この階層説を5段階でいうならば、自己実現欲求が最上位として考えられている節がありますが、実はその先といいますか、自己実現を含んだ大きな概念があります。それが、自己超越。
ただし、マズローは自己実現より上に位置する自己超越欲求とは言っていないんです。超越という言葉を使っていて、自己とも欲求とも言っていない。超越とは、自己実現という「利他と利己の統合」の先にある概念です。
人間性心理学を生み出し、さらにはトランスパーソナル心理学の足掛かりを作ったマズローのいう超越は、自己を超えた存在や価値に目を向けて、自分の能力や可能性を他者や社会、さらには全人類や宇宙全体のために活用しようとする状態を指すものです。この段階では、一般的には自己実現を達成した後にさらに高次の目的を追求します。
超越の特徴を5つ挙げると、
① 他者の幸福や成長に貢献しようとする欲求が強まる利他的行動が強くなる
② 宗教的、哲学的、スピリチュアルな価値観を重視して、自己の存在を超えた「大きな全体」の一部としての自覚を持つようになる
③ 芸術や科学、文化的な活動を通じて、人々に感動やインスピレーションを与えるようになる
④ 愛、真実、平和、調和といった普遍的な価値を求めて具現化するようになる
⑤ エゴを手放し、自分を超えた大きな目的に集中して、「自分が他者や宇宙と一体である」という、いわゆるワンネス感覚を持つ
そんなところが挙げられます。
いやぁ何がすごいかって、マズローは1908年に生まれて1970年まで生きた人。彼が生きた時代は、いわゆる占星術の時代区分でいうところの、1800年前後から約220年続いたゴリゴリの土の時代。土の時代の特徴は、物質的価値や社会構造に焦点が当てられたといえます。
たとえば、物理的な富や所有、具体的な成果が重視されたり、「安定性」「持続性」「具体性」が社会の基本理念となって国家や企業のヒエラルキーや階層構造、制度が重要視されたり、「より多くを持っている」という物質的成功が幸せの象徴になったり、「男は外で働き、女は家を守る」とか、あるいは世襲制や地縁・血縁みたいな固定観念や伝統、社会通念が重視されたりした時代です。
マズローはそんなおもくるしい堅い土の時代を生きたなかで、今の風の時代に相応しい軽やかな波動が放たれる超越を生み出したことが偉大な功績なのではないかって思います。マズローが超越について本格的に言及し始めたのは1960年代後半です。1943年に欲求の階層説を発表してから約20~25年後に加えられたとされています。わずか62年というマズローの生涯の本当に晩年ですよね。
2020年から風の時代が始まりましたが、その後の移行期間もあったりして、2024年11月から本格的に始まったと言われています。風の時代は情報や知識、コミュニケーションが重視され、目に見えないものに価値が置かれ、柔軟性も含んで、所有ではなく共有の時代で、同じく200年ほど続きます。
さらにこの先の200年後には水の時代がやってきます。水の時代はおそらく、「感情」「共感」「直感」「癒し」を象徴とする時代が予想されます。感情と共感を重視して、スピリチュアルな探求へのさらなる深化があったり、社会の柔軟性と流動性がさらに拡大したり、環境との調和が進んだりっていうところが特徴的な時代になるのかもしれないですね。
マズローの功績は、土の時代から風の時代に受け継がれ、おそらくきっと水の時代にも受け継がれるのではないかなと個人的に予測しています。
ちなみに、超越に到達する人は「わずか2%」という主張があります。2%って!
これは厳密に証明されたデータに基づいているわけではなく、マズローの観察や理論の中で言及された推定値の一つとのこと。推定値とはいえ、それにしても少ないですね。
でも、私が想像するに、土の時代だったからではとも思ったり。今の風の時代、次の水の時代に入っていけば、超越への到達者はもっともっと増えて、見渡せば、そういう人たちばっかりになるかもしれないですね。この地球という星は今とは大きく変わるんじゃないかなと楽しい想像を膨らましているところです。ロマンですね。
(おしまい)
※こちらの記事は過去のSpotifyポッドキャストの内容を文字起こししたものです。キャリア、スピリチュアリティ、グリーフなどをテーマにした番組『わたしに還る時間』もよろしければお聴きください♪
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